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「父の死ぬ瞬間の、最期の呼吸が撮りたい」ーー虚構の世界に生きた人間の真実【緒形圭子】

「視点が変わる読書」第19回 『ジツゴト』中村結美 著

■「父の死ぬ瞬間の、最期の呼吸が撮りたい」 

 

 「父の死ぬ瞬間の、最期の呼吸が撮りたい」――

 それが、老いた父を撮影し始めた時、中村が終着点として願っていたことだったという。何故なら、織本は常々「演技は呼吸だ」と言い続けてきたからである。

 映画やテレビという虚構の世界で、そこに生きて生活している人のように存在するためにはどうしたらいいかを考え続けた結果、織本が見つけた極意が、「生きて存在するとは何か、それは呼吸することだ」ということだったのだ。

 織本は201915日、那須の自宅で倒れて病院に救急搬送され、そのまま入院となった。いっときは回復の兆候もみられたが、318日、老衰のため永眠した。

 果たして中村は父の最期の呼吸を撮ることができたのか――

 それを知りたい方は是非「うしろから撮るな」を見ていただきたい。

 

文:緒形圭子

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緒形圭子

おがた けいこ

文筆家

1964年千葉県生まれ。慶應大学卒。出版社勤務を経て、文筆業に。

『新潮』に小説「家の誇り」、「銀葉カエデの丘」を発表。

紺野美沙子の朗読座で「さがりばな」、「鶴の恩返し」の脚本を手掛ける。

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